不器用なわんこ
あむの3回忌がすぎた
あむ、大ちゃんの面倒よくみてあげてくれてる?おねがいね
大ちゃんは大きな体と大きな声に反して、几帳面で不器用な男だった
そのアンバランスが大ちゃんの個性
あむには決して近づかなかったし、あむはもちろん くぅにも私にも絶対逆らわなかった
思えば 生まれたときは一度冷たくなりかけた小さな命をパパが一生懸命手で温めて、よみがえったんだよ
でも今度は 帰ってこなかった
太く短く、力いっぱい生きて、あっけなく逝ってしまった 大ちゃん
大ちゃんはそれでよかった?
大ちゃん・・
ただ 大やくぅには、あむのように最期に苦しい思いをさせたくない一心だった
「ママ、ボクもう疲れた そろそろ限界。だから今日はお家にいよう」って
あの日 家を出る前、いつもなら興奮して騒ぐのに、いつになくおすわりして私の目をじっと見つめていたのは、そう言いたかった?
大ちゃん・・
あむのときもそうだったけど、体が弱ってきたころ 何か言いたげにじっと私の目を見つめることが多くなっていた
何か言いたいのは分かっていたけど、どこがどう具合悪いのか、どうしたいのか うまく察してあげられなくて本当にごめんね
どこか辛いんだろうと思って、少しでも楽になる手立てを考えたり、頑張って治療すれば少しは楽になるだろうと必死にやっていたけど、
もしかしたら あの子たちが言いたかったのは、そんなことじゃなかったのかもしれないと、最近大ちゃんを思い出して考えるようになった
もちろん できることは何でもしてあげたいし、具合が良くなるならどんなことでも・・と思っていたけど、それは私がやりたいことで、はたして あの子たちのしたいことだったのか?
わんこは今を生きている
人間のように未来は考えない
だから、楽しいこともつらいことも受け入れていて 死が近いこともたぶん本能的に感じていて そのうえで私に何か訴えてのかもしれない
だとしたら、わんこたちが本当に望んでいたことは何なのか・・大ちゃんを見送ってから そんなことをかんがえるようになった
犬の気持ちが分かればいいのに、というのは全ての飼い主の願いだけど・・
答えはなかなか降ってこない
ただ 後悔しない選択をするしかないということはわかる
そうでなければ 物言わぬあの子たちの死を受け入れることができない
後悔しまくって納得できなかったあむの死と 全力を尽くして頑張ってくれた大を見送って そう思う
なんだろう 急に・・・
目の前で大ちゃんが不思議そうな顔で見ている
大 いまごろ何してる?
あと1年、せめて1か月
優しく抱きしめていてあげたかった
こんなにがんばったのに これ以上望むのは自分の勝手だね
これは大ちゃんが選んで生まれてきた寿命だと言った人がいる
だから大ちゃんは すべて受け入れているのだと
太く短い犬生は 大ちゃん自身が決めたこと
そう言われれば 少し気が楽になる
大ちゃんは 辛くしんどい余生を送るより、すっぱり終わりにしたかったんだと思えば、自分への言いわけにもなる
だけどやっぱり、どうして もっと早くしこりに気づかなかったのかとか、すぐに調べてもらわなかったのかとか、どうしてしんどいのは心臓のせいだと思い込んでいたのか、とか 押し寄せてくる
大ちゃん よーく がんばったね、えらかったよ
これ以上 がんばれ!っていったらバチが当たるね
10年もそばにいてくれて、楽しい時間いっぱいくれて、ほんとに ありがとう
数カ月前、重い心臓病を患う大のことを 先生が「大ちゃん、本当によくがんばってますよ」と しみじみ言ってくれた言葉がとても印象に残っている
先生にしてみれば、こんなに大きな心臓を抱えてよく元気にしているという実感だったんだろう
そのとき、元気なころと一見変わりなく見える大ちゃんに 私は先生の言葉がいまひとつピンときてなかった
亡くなったときに「限界だったんでしょう」と言われたときも正直私は実感がなかった
目の前の光景が なにか夢を見ているようで信じられなかったのだ
たしかに 朝は全然起きれなくて朝ごはんも薬も飲めなかったし、横になってばかりだったし、散歩に行っても途中で抱っこされてたし、睡眠中の呼吸も浅く速くなって、ずっと心配だったけど、でも 散歩も行きたいし 午後には普通にあるいて動いて ごはんも食べていたから、まだもう少し 大丈夫、大丈夫!
今日明日どうにかなるなんて思っていなかった
ただ、しんどいのは腫瘍のせいもあると分かってから、少しでも楽になればと すがるような思いだった
お医者さんから見れば 手の施しようがない状態だったのかもしれない
「大ちゃんは薬もちゃんと受け入れて一生懸命がんばっていたから、心臓もうまく持ちこたえて ここまでこれた。だけど貧血で血が回らなくなって、体力がどんどん落ちて、心臓に負担がかかりすぎて発作的だったんでしょう」と。
運命の日だったと思うしかない
大ちゃん、ありがとうね
天気のいい、青い空の日の散歩は いつも大ちゃんと一緒だよ
こころは いつも くぅちゃんとママのそばに
大ちゃん、お母ちゃんより先に行っちゃったけど
大ちゃんの分も くぅちゃんを大事にするからね



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